平方完成のやり方と目的

平方完成のやり方

平方完成ができるようになるためには、次の2つが大切です。

  • カッコの使い方
  • 中学3年生の因数分解

カッコの使い方

カッコの種類

カッコにはいくつか種類があります。平方完成で出てくるのは、$()$と$\{\}$です。

$()$を「小カッコ」と言います。

$\{\}$を「中カッコ」と言います。

カッコは、左カッコと右カッコをセットで使います。

とても大切なこととして、左カッコがあったら、必ず右カッコを確認しなければなりません

中カッコを使う目的

\[3\times(2-(4+5))\] このように書いてしまうと、どの左カッコがどの右カッコとセットになっているのか分かりにくくなってしまいます。

このとき、外側のセットを中カッコにします。 \[3\times\{2-(4+5)\}\]

このようにすると、左カッコと右カッコのセットが分かりやすくなります。

左の中カッコ$\{$があったら、その後に左の小カッコ$($が出てくると考えても大丈夫です。

中カッコと小カッコの変化

同じ所にあるカッコは、中カッコになったり小カッコになったりします。

このページでは、あるカッコが小カッコから中カッコになることを「中カッコに上げる」と言うことにします。また、中カッコから小カッコになることを「小カッコに下げる」と言うことにします。

小カッコに下げる例として、$3\times\{2-(4+5)\}$を考えます。

この式で小カッコにはさまれた$4+5$を計算すると、 \[3\times\{2-9\}\] になります。

このとき、中カッコの内側には小カッコがありません。中カッコを小カッコに下げます。 \[3\times(2-9)\]

逆に、平方完成では、小カッコを中カッコに上げることがあります。

平方完成の基本形

平方完成の中心は、次のような式変形です。 \[x^2+6x=\left(x+3\right)^2-9\]

等号($=$)の左側を左辺、右側を右辺と言います。上の式では、左辺は$x^2+6x$、右辺は$\left(x+3\right)^2-9$です。

左辺と右辺の2つを合わせて、両辺といいます。両辺は、等しくなければなりません

平方完成では、右辺を展開したら左辺に戻るようにしなければなりません。

上の例では、右辺の$\left(x+3\right)^2$を展開すると、$x^2+6x$とは別に$9$が出てきます。この$9$があると、左辺と等しくなりません。$9$を打ち消すために、$9$を引きます。

発展形の例

\[\begin{aligned} &2x^2+8x+3\cdots①\\ =&2\left(x^2 + 4x\right)+3\cdots②\\ =&2\left\{\left(x + 2\right)^2 -4\right\}+3\cdots③\\ =&2\left(x + 2\right)^2 -8+3\cdots④\\ =&2\left(x + 2\right)^2 -5\cdots⑤\\ \end{aligned}\]

平方完成をしているのは、2行目と3行目です。関係するところだけ抜き出します。 \[x^2 + 4x=\left(x + 2\right)^2 -4\]

カッコを整理します。

3行目の中カッコは、2行目の小カッコが格上げされたものです。3行目の小カッコは、中カッコの内側に新しくできたものです。

また、3行目の中カッコは、4行目で消えます。3行目の小カッコ、4行目の小カッコ、5行目の小カッコは、同じものです。

基本形を文字で表したもの

\[x^2+bx=\left(x+\dfrac{b}{2}\right)^2-\dfrac{b^2}4\]

等式の両辺は、等しくなければなりません。

$\left(x+\dfrac{b}{2}\right)^2$を展開すると、$x^2+bx$とは別に、$\dfrac{b^2}4$が出てきます。それを打ち消すために、$\dfrac{b^2}4$を引きます。

発展形を文字で表したもの

$a\neq0$とします。

\[\begin{aligned} &ax^2+bx+c\\ =&a\left(x^2 + \dfrac{b}{a}x\right)+c\\ =&a\left\{\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 -\dfrac{b^2}{4a^2}\right\}+c\\ =&a\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 -\frac{b^2}{4a}+c \end{aligned}\]

2行目と3行目の間で平方完成をしています。その部分だけ取り出すと、次のようになります。

\[x^2 + \dfrac{b}{a}x=\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 -\dfrac{b^2}{4a^2}\]

平方完成を練習する前に

「平方完成」と名前が付いていますが、特別なことをしているわけではありません。

中カッコは見慣れないかもしれませんが、平方完成で行う計算には新しいものが1つもありません。

平方完成の計算を1行ずつ理解することができない場合、小学算数・中学数学の計算が抜けています。例えば、次のようなものです。

  • 小学算数
    • 分配法則
    • 割り算と分数
  • 中1数学
    • 等号(=)の読み方
    • カッコ
  • 中2数学
    • 文字式のかけ算・割り算
  • 中3数学
    • 2次式の展開
    • 因数分解

まずは、中学3年生で勉強した$(x+5)^2=x^2+10x+25$などの計算や因数分解がスムーズにできるようにしましょう。

平方完成の目的

平方完成には、目的があります。その目的は、次のようなことを示すことです。

  • 2次方程式の解の公式
    • 判別式
  • 2次関数のグラフが線対称であること
    • ($x$軸との交点が2つあるとき)軸の左と右で1つずつ交点を持つこと
  • (下に凸の場合)軸から離れると$y$が大きくなること
  • 頂点
    • 2次関数のグラフに頂点があること
    • 2次関数のグラフの頂点の座標

大事なことは、これらの目的平方完成という手段の関係を、「当たり前」と思い込めるようにしておくことです。

これらの目的は,式変形を練習するだけでは分かりません。必ず、実際に平方完成を使う中で身に付けます。

2次方程式の「解の公式」の導出

$a \neq 0$とします。$x$に関する2次方程式$ax^2+bx+c=0$の解を求めます。

\[\begin{aligned} ax^2+bx+c&=0\\ a\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 -\frac{b^2-4ac}{4a} &=0\\ a\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 &=\frac{b^2 -4ac}{4a}\\ \left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 &=\frac{b^2 -4ac}{4a^2}\\ x + \frac{b}{2a} &=\pm\sqrt{\frac{b^2 -4ac}{4a^2}}\\ &=\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{|2a|}\\ &=\pm\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\ x &=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \end{aligned}\]

この2行目で、平方完成をしています。

2次関数のグラフが線対称であること

2次関数の平方完成によって、2次関数のグラフが線対称になることを示すことができます。

$a \neq 0$とします。2次関数は、平方完成によって、$y = a(x-p)^2 +q$という形にすることができます。

$(x-p)^2=\{\pm(x-p)\}^2=|x-p|^2$から、$y = a|x-p|^2 +q$になっています。

したがって、$y$は、$x$と$p$との距離によって定まります。$p$からの距離が等しい実数は、$p$より大きいものと$p$より小さいものと、1つずつあります。

したがって、2次関数のグラフは、直線$x=p$を対称軸として、線対称となります。

因数分解と軸

放物線$y=a(x-b)(x-c)$と$x$軸との交点の$x$座標は、$b$と$c$です。そして、この放物線は、$x$軸に垂直な直線を軸に線対称です。したがって、放物線の軸は直線$\displaystyle x = \frac{b+c}{2}$となります。

(下に凸の場合)軸から離れるほど$y$が大きいこと

2次関数は、$y = a|x-p|^2 +q$という形にすることができます。

$a\gt0$とします。$s$、$t$を実数として、$|s-p| < |t-p|$とすると、次の3つの式が成り立ちます。

\[\begin{aligned} &|s-p| < |t-p| \\ \iff&|s-p|^2 < |t-p|^2\\ \iff&a|s-p|^2 +q < a|t-p|^2 +q\\ \end{aligned}\]

$a\gt0$の場合、軸から離れるほど$y$が大きくなります。

2次関数のグラフに頂点があること

$a \neq 0$とします。2次関数は、平方完成によって、$y = a(x-p)^2 +q$という形にすることができます。

$x-p$は実数ですから、$(x-p)^2 \geqq 0$となります。

$a>0$とすると、次のようになります。 \[a(x-p)^2 \geqq 0\] \[y=a(x-p)^2+q \geqq q\]

ただし、$y=q$となるのは、$(x-p)^2 =0$のとき、つまり$x=p$のときに限ります。

$|x-p|$が大きくなると$y$も大きくなるのでした。したがって、$a>0$の2次関数のグラフは、頂点から右上・左上に腕を伸ばしたような形になります。

最大値と最小値

人によるのかもしれませんが、私は、最大最小の問題を図で考えるより、距離で処理した方が楽だと思います。

基本

2次関数$y=(x-1)^2 +3$について、$-1 \leqq x \leqq 5$のとき、最大値と最小値を求めます。

$x$と$1$ との距離が大きいほど、$y$も大きくなります。

よって、$x=1$で$y$は最小となり、その値は$3$となります。また、$x=5$で$y$は最大となり、その値は$19$となります。

$x$の範囲が別の定数(文字)で決まっているとき

2次関数$y=(x-1)^2 +3$について、$a \leqq x \leqq a+2$のとき、最大値と最小値を求めます。

$x$と$1$ との距離が大きいほど、$y$も大きくなります。

最大値と最小値を得るためは、$a \leqq x \leqq a+2$を満たす$x$の値のうち、次の2つを求めればよいということになります。

  • $1$から最も遠いもの
  • $1$に最も近いもの

最大値

$1$ から最も遠い値の候補は、$a$と$a+2$ となります。$a$か$a+2$のどちらが遠いかは、$1$が$a$と$a+2$の平均$a+1$より大きいかどうかで決まります。

  • $1 > a+1$ のとき、$a+2$ の方が近く、$a$ の方が遠いことになります。 したがって、$y$ は、$x=a$ で最大となります。
  • $1 < a+1$ のとき、$a$ の方が近く、$a+2$ の方が遠いことになります。したがって、$y$は、$x=a+2$で最大となります。
  • $1 = a+1$ のときは、どちらも距離が等しくなります。つまり、$1 = a+1$ のとき、$y$ は、$x=a$、$a+2$ で最大となります。

場合分けは2つで構いません。等号の付け方も、次のように3通りあります。この場合、どれでも構いません。

  • 場合分け1:$a+1 \leqq 1$と$a+1 >1$
  • 場合分け2:$a+1 <1$と$a+1 \geqq 1$
  • 場合分け3:$a+1 \leqq 1$と$a+1 \geqq 1$

最小値

  • $a \leqq 1 \leqq a+2$のとき、$a \leqq x \leqq a+2$を満たす$x$のうち$1$に最も近いものは、$1$。$y$は、$x=1$で最小となります。
  • $1 \leqq a$ のとき、$a \leqq x \leqq a+2$を満たす$x$のうち$1$に最も近いものは、$a$。$y$は、$x=a$で最小となります。
  • $a+2 \leqq1$のとき、$a \leqq x \leqq a+2$を満たす$x$のうち$1$に最も近いものは、$a+2$。$y$ は、$x=a+2$で最小となります。

判別式と平方完成

$\sqrt{ }$の中身なかみ

判別式$b^2-4ac$は、2次方程式の解の公式にある$\sqrt{ }$の中身なかみでした。$b^2-4ac$を「$\sqrt{ }$の中身なかみ」と呼ぶ方が分かりやすいと思います。しかし、「判別式」という言葉が定着しているので、「判別式」と呼ぶことにします。

2次方程式の実数解の個数を判別します。

次のようなとき、判別式を使います。

  • 2次方程式の実数解の個数を調べる
  • 2次方程式の実数解の個数を調節する

$b^2-4ac=0$ならば、「解の公式」\[\displaystyle x =\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\]について、$\pm$がどうでもよくなります。そのため、解の個数は1つとなります。

$b^2-4ac\neq 0$ならば、「解の公式」\[\displaystyle x =\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\]について、$\pm$が影響するようになります。そのため、実数かどうかはともかく、解の個数は2つとなります。

判別式と頂点の$y$座標

2次方程式の全ての項を左辺か右辺の一方に寄せ、その辺の式を2次関数と見ます。\[\displaystyle y=a\left(x + \frac{b}{2a} \right)^2 -\frac{b^2-4ac}{4a}\]$\sqrt{ }$の中身なかみは、そのグラフの頂点の$y$座標から来ています。

例えば、$x^2$の係数が正であるとき、「判別式が正である」と「頂点の$y$座標が負である」は、同じことを言っています。

判別式の代わりの平方完成

判別式を作る代わりに平方完成で済むこともあります。

例えば、$x$に関する2次方程式$x^2-2x+5 = 0$について、左辺を$(x-1)^2+4 = 0$とした上で、「任意の実数$x$に対し$(x-1)^2+4 \geqq 4>0$だから、実数解はない」と言うこともできます。

2次不等式の解

2次不等式について次のようになるとき、平方完成が便利です。

  • 解はすべての実数である。
  • 実数解はない。

「判別式」という日本語を書かなくてよいのが楽です。

例えば、$x$に関する2次不等式$x^2-2x+5 < 0$に実数解が無いことを証明します。証明の方法には、次の2つがあります。

2次方程式$x^2-2x+5=0$の判別式について、\[1-5=-4<0\]である。よって、不等式は実数解を持たない。

任意の実数$x$に対し\[x^2-2x+5=(x-1)^2 +4>0\]である。つまり、不等式は実数解を持たない。

判別式は、2次方程式の用語です。そのため、そのままでは、不等式で使えません。

また、例えば、3次不等式を解く際、次のようなことも考えられます。

\[\begin{aligned} (x-1)(x^2 -2x +5) >&0 \\ (x-1)\{(x-1)^2 +4 \}>&0\\ x-1>&0 (\because (x-1)^2 +4\geqq 4\gt0)\\ x\gt&1 \end{aligned}\]

解の存在範囲

$x$に関する2次方程式$x^2-2ax-5a+6=0$が異なる2つの正の解を持つ。$a$の必要十分条件を求めます。

方程式は$(x-a)^2 -a^2-5a+6=0$となります。

異なる2つの実数解を持つ

「方程式が異なる2つの実数解を持つ。」$\iff$「放物線$y=(x-a)^2 -a^2-5a+6$について、頂点の$y$座標が負である。」

つまり、$-a^2-5a+6 < 0$です。

軸が正

放物線$y=(x-a)^2 -a^2-5a+6$は、直線$x=a$ に関して線対称です。したがって、$x$軸と2回交わるとき、直線 $x=a$の左右で1回ずつ交わります。

解が2つとも正であるためには、$a \gt 0$が必要となります。

$x=0$で$y\gt 0$

この放物線は、$0 \lt x \lt a$で1回だけ$x$軸と交わります。放物線は、$x=a$で$x$ 軸の下にあるので、$x=0$で$x$軸の上にあることが必要です。言い換えると、$-5a + 6 \gt0$が必要です。

要約

要約すると、次のようなことを言っています。

  • 原点から見て、グラフの頂点が右下にある。
  • 放物線の左腕が$y$軸の正の部分を通る。

十分条件

3つの不等式の1つ1つは、異なる2つの正の解を持つための必要条件です。そのため、3つの必要条件を組み合わせると、十分条件になるとも言わなければなりません。

答案には、あまり書かなくてもよいみたいですが。

結局、必要十分条件は、3つの連立不等式を解いて、\[1 \lt a \lt \dfrac{6}{5}\]となります。

数学Ⅱで勉強する「解と係数の関係」

「解の存在範囲」は、数学Ⅰで扱うことになっています。

グラフで答えると、「この範囲で解を持つならば、$a$の範囲がこうである。」ということは示しやすいと思います。しかし、逆に「$a$の範囲がこうなら、この範囲で解を持つ。」と言えているのか、しっくりこないかもしれません。

数学Ⅱで勉強する「解と係数の関係」を用いると、必要十分であることを示しやすいと思います。