定数とは(高校数学)

はじめに

$x$の関数$y=x^2-2ax$の定数$a$には、色々な値を代入することになります。この定数$a$は、定まっているようには見えません

定数と変数の違いについて、高校数学Ⅰを始めてから1年以内の高校1年生に向けて説明します。

定数

「定数」の例として、最初に挙げられるのは、次のような「数」です。

  • $1$
  • $0.7356839$
  • $\sqrt{15}$
  • $-\dfrac{3}{5}$

「文字」

いわゆる「文字」(例:$x$、$a$、$r$)には、指定された条件に合う限り、何でも代入することができます。

$\pi$という「文字」は、多くの場合、円周率とされています。しかし、円周率を表す「文字」は、$\pi$でなくても構いません。また、「$\pi$を円周率とする。」という宣言をなくせば、$\pi$に別の値を代入することもできます。

「文字」をただながめているだけでは、変数と定数を区別できません。

代入する優先順位

「文字」ごとに代入する優先順位を決めることができます。複数の「文字」があったとき、先に値を代入すべきものを定数、後で値を代入すべきものを変数と呼びます。

「$\pi$を円周率とする。」は、最も先に$\pi$に円周率を代入することを意味します。

定数の場合分け(定数1つの1次方程式)

方程式の定義などについては、「方程式と十分条件・必要条件」をご覧ください。

$a$、$x$を実数とする。

$x$に関する方程式$ax=0$を解け。

(ⅰ)$a=0$のとき
$x$の値に関わらず、等式$ax=0$は成立する。つまり、解は、すべての実数となる。

(ⅱ)$a\neq 0$のとき
「$ax=0\iff x=0$」である。つまり、解は、$x=0$のみである。

この方程式では、$a$は定数とされています。先に$a$に値を代入した後で、$x$について解を求めるということになります。

(ⅱ)では、$a$に$0$以外の実数を代入しています。何を代入しようが、「等式の両辺を$a$で割る」という作業に違いはありません。同じ作業をするなら、場合分けをしなくても構いません。

場合分けをしてもよい

「場合分けをしなくても構わない」というのは、場合分けをしてもよいということでもあります。

やらなくてもよいけれど、やってもよいようなことは、世の中にたくさんあります。例えば、スーパーやコンビニでペットボトル飲料1本を現金で買うために、100万円分の札束は要りません。しかし、その札束を店に持って行きたいなら、持って行っても構いません。

「場合分けをしなくても構わない」というのも、「場合分けをしてもよい」という意味を含んでいます。

上の方程式$ax=0$について、2通りで済むとしても、3通りでも1億通りでも1兆通りでも好きなだけ場合分けをしてよいということです。

例えば、次のように分けても構いません。

  • $a \leqq -987654321$のとき
  • $-987654321 \leqq a\leqq -3$のとき
  • $-3 \lt a< 0$のとき
  • $a=0$のとき
  • $0\lt a \leqq 0.000000000001$のとき
  • $0.000000000001< a \leqq \sqrt{1234567}$のとき
  • $\sqrt{1234567}\lt a$のとき

現実的には、勉強時間や試験時間を無駄づかいすることになります。また、答案を読むのがとても面倒です。そのため、場合分けはできるだけ少ない方がよいと思います。

定数の場合分け(定数2つの1次方程式)

$a$、$b$、$x$を実数とします。

$x$に関する方程式

$x$に関する方程式$ax+b=0$を解け。

(ⅰ)$a=b=0$のとき、$x$の値に関わらず、等式$ax+b=0$は成立する。つまり、解は、任意の実数となる。

(ⅱ)$a=0,b\neq 0$のとき、$x$の値に関わらず、等式$ax+b=0$は成立しない。つまり、解はない。

(ⅲ)$a\neq 0$のとき、「$ax+b=0\iff x=-\dfrac{b}{a}$」である。つまり、解は、$x=-\dfrac{b}{a}$のみである。

ここでは、$a$と$b$は定数とされています。先に$a$、$b$に値を代入した後で、$x$について解を求めるということになります。

$a$と$b$の優先順位は、対等です。

(ⅱ)では、$b$に$0$以外の実数を代入しています。何を代入しようが、作業に違いはありません。同じ作業をするなら、場合分けは不要です。

(ⅲ)では、$a$に$0$以外の実数を代入しています。何を代入しようが、作業に違いはありません。同じ作業をするなら、場合分けは不要です。

$a$に関する方程式

$a$に関する方程式$ax+b=0$を解け。

(ⅰ)$x=b=0$のとき、$a$の値に関わらず、等式$ax+b=0$は成立する。つまり、解は、任意の実数となる。

(ⅱ)$x=0,b\neq 0$のとき、$a$の値に関わらず、等式$ax+b=0$は成立しない。つまり、解はない。

(ⅲ)$x\neq 0$のとき、「$ax+b=0\iff a=-\dfrac{b}{x}$」である。つまり、解は、$a=-\dfrac{b}{x}$のみである。

ここでは、$b$と$x$は定数とされています。先に$b$、$x$に値を代入した後で、$a$について解を求めるということになります。

$b$と$x$の優先順位は、対等です。

$b$に関する方程式

$b$に関する方程式$ax+b=0$を解け。

解は$b=-ax$である。

ここでは、$a$と$x$は定数とされています。先に$a$、$x$に値を代入した後で、$b$について解を求めるということになります。

$a$と$x$の優先順位は、対等です。

定数の場合分け(定数1つの2次関数)

$x$の関数$y=(x-a)^2$について、$0\leqq x \leqq 1$における最小値を求めよ。

$a$は定数なので、$a$に代入した後で$x$に代入します。

この放物線の軸は直線$x=a$です。

  • $0\leqq a \leqq 1$のとき、$a$にどの数を代入しても、軸は領域$0\leqq x \leqq 1$に含まれます。したがって、$a$にどの数を代入しても、$x=a$で最小値となります。
  • $a\leqq 0$のとき、$a$にどの数を代入しても、軸は領域$x\leqq 0$に含まれます。$0\leqq x \leqq 1$の範囲内の$x$のうち、軸に最も近いのは、$a$にどの数を代入しても、$x=0$です。したがって、$a$にどの数を代入しても、$x=0$で最小値になります。
  • $a\geqq 1$のとき、$a$にどの数を代入しても、軸は領域$x\geqq 1$に含まれます。$0\leqq x \leqq 1$の範囲内の$x$のうち、軸に最も近いのは、$a$にどの数を代入しても、$x=1$です。したがって、$a$にどの数を代入しても、$x=1$で最小値になります。

場合分けは、次のようなものなら、何でも構いません。

例1

  • $a\leqq 0$のとき
  • $0\leqq a \leqq 1$のとき
  • $a\geqq 1$のとき

例2

  • $a\lt 0$のとき
  • $0\leqq a \leqq 1$のとき
  • $a\gt 1$のとき

例3

  • $a\leqq 0$のとき
  • $0\leqq a \lt 1$のとき
  • $a\geqq 1$のとき

この場合、すべての不等号に等号をつけても構いません。

次の場合分けは、だめです。

  • $a\lt 0$のとき
  • $0\lt a \lt 1$のとき
  • $a\gt 1$のとき

$a=0,1$のときを検討していないことになるからです。もちろん、次のように場合分けをするなら、構いません。

  • $a\lt 0$のとき
  • $a=0$のとき
  • $0\lt a \lt 1$のとき
  • $a=1$のとき
  • $a\gt 1$のとき

なお、繰り返しますが、3つで済むのに5つも場合分けをすると、試験時間を無駄づかいすることになります。