方程式と十分条件・必要条件

「方程式の解」と十分条件

「方程式」という語の定義は、中学1年生の教科書に書いてあります。

式のなかの文字に代入する値によって、成り立ったり、成り立たなかったりする等式を方程式という。

また、方程式を成り立たせる文字の値を、方程式の解という。

東京書籍『新しい数学1』(令和3年発行)p.92

「方程式$2x+5=9$を解きなさい。」は、「等式$2x+5=9$が成立するような$x$の値を求めなさい。」ということです。

「$x=2$は、方程式$2x+5=9$の解である。」というのは、「$x=2 \implies 2x+5=9$」ということです。

「方程式」という語を使う必要性があるのかというのは、また別の問題です。

「方程式のすべての解」と必要十分条件

「方程式$2x+5=9$の解をすべて求めなさい。」は、「$x$の値に関して、$2x+5=9$のための必要十分条件を求めなさい。」ということです。

そのため、\[x=2 \implies 2x+5=9\]だけでなく\[2x+5=9\implies x=2\]も示さなければなりません。

1次方程式を解くときには、両辺に$0$でない数を足したりかけたりしているだけです。そのため、わざわざ、必要条件にもなっていることを言う必要はありません。

2次方程式と必要十分条件

2次方程式$x^2-3x-4=0$を解きます。

\[\begin{aligned} &x^2-3x-4=0\\ \iff&(x-4)(x+1)=0\\ \end{aligned}\]から、$4$と$-1$が解となります。それはなぜでしょうか。

中学3年生の教科書には、次のように書いてあります。

2つの数を$A$、$B$とするとき$AB=0$ならば$A=0$または$B=0$

東京書籍『新しい数学3』(令和3年発行)p.81

この命題の対偶は、 \[A\neq0\text{かつ}B\neq0\implies AB\neq0\]です。こちらの方が分かりやすいと思います。

また、言うまでもなく、「$A=0$または$B=0\implies AB=0$」となります。

したがって、「$AB=0\iff A=0$または$B=0$」となります。

これと同じことを$(x-4)(x+1)=0$に行います。

\[\begin{aligned} &(x-4)(x+1)=0\\ \iff&x-4=0\text{または}x+1=0\\ \iff&x=4\text{または}x=-1 \end{aligned}\] となります。

したがって、解は、$x=4,-1$です。

「$x=4\text{または}x=-1$」は、等式の必要条件でもあります。したがって、解は、この2つ以外にはありません。

連立1次方程式と必要十分条件

次の連立方程式を解きます。 \[\begin{aligned} \left\{ \begin{array}{l} x+y=10 \cdots \text{①}\\ x+2y=16 \cdots \text{②}\\ \end{array} \right. \end{aligned}\]

普通は、次のようなことをします。 \[\begin{aligned} &\left\{ \begin{array}{l} x+y=10 \cdots \text{①}\\ x+2y=16 \cdots \text{②}\\ \end{array} \right.\\ \implies&(x+2y)-(x+y)=16-10 \cdots \text{③}\\ \iff&y=6\cdots \text{③}^{\prime} \end{aligned}\]

番号だけで表すと、\[\text{①かつ②}\implies\text{③}\iff\text{③}^{\prime}\]です。

これだけでは、この連立方程式の$y$の解が$y=6$であるとは言えません。

連立方程式の解は、全ての等式が成立するための十分条件です。$y=6$は、2つの等式が共に成立するための必要条件に過ぎません。このままでは、$y=6$が$y$の解であるかは分かりません。

しかし、 \[\begin{aligned} &\left\{ \begin{array}{l} x+y=10 \cdots \text{①}\\ (x+2y)-(x+y)=16-10 \cdots ③\\ \end{array} \right.\\ \implies&x+2y=16 \cdots \text{②}\\ \end{aligned}\]となります。

番号だけで表すと、\[\text{①かつ③}\implies\text{②}\]です。

まとめると、次の命題が真になります。

  • $\text{①かつ②}\implies③\iff\text{③}^{\prime}$
  • $\text{①かつ③}\implies\text{②}$

結局、\[\text{①かつ②}\iff\text{①かつ③}\iff\text{①かつ③}^{\prime}\]となり、元の連立方程式で$②$と$③^{\prime}$とを置き換えることができます。

同様に、\[\text{①かつ②}\iff\text{②かつ③}\iff\text{②かつ③}^{\prime}\]となり、元の連立方程式で①と③$^{\prime}$を置き換えることができます。

「$\text{①かつ③}^{\prime}\iff (x,y)=(4,6)$」 から \[(x,y)=(4,6)\iff \left\{ \begin{array}{l} x+y =10\\ x+2y=16\\ \end{array} \right.\]となります。

連立方程式2

次の連立方程式を解きます。 \[\begin{aligned} \left\{ \begin{array}{l} x + y = 1\cdots \text{①}\\ x^2 + y^2 = 2\cdots \text{②}\\ \end{array} \right. \end{aligned}\]

①を満たす組$(x,y)$だけを想定すると、\[\text{①}\iff y=1-xから、\] \[\begin{aligned} ②\iff&x^2+(1-x)^2=2\\ \iff& x=\dfrac{1\pm\sqrt{3}}{2}\\ \end{aligned}\]となる。

これを$y=1-x$に代入すると、$y=\dfrac{1\mp\sqrt{3}}{2}$(複合同順)となる。

ここで証明されているのは、次の命題です。 \[\begin{aligned} &(x,y)=\left(\dfrac{1\pm\sqrt{3}}{2},\dfrac{1\mp\sqrt{3}}{2}\right)\\ \iff&\left\{ \begin{array}{l} x + y = 1\\ x=\dfrac{1\pm\sqrt{3}}{2}\\ \end{array} \right.\\ \iff&\left\{ \begin{array}{l} x + y = 1\\ x^2+y^2=2\\ \end{array} \right. \end{aligned}\]

連立方程式の解は、$(x,y)=\left(\dfrac{1\pm\sqrt{3}}{2},\dfrac{1\mp\sqrt{3}}{2}\right)$(複合同順)の2組となります。

連立方程式3

$x$に関する連立方程式$ \begin{cases} x^2+kx+4=0\\ x^2+4x+k=0\\ \end{cases} $が実数解を持つような$k$の値を求め、その解も求めなさい。

この連立の等式を$P$と呼ぶことにします。

必要条件

次の命題は真です。 \[\begin{aligned} &P\\ \implies&x^2+kx+4=x^2 +4x+k\cdots \text{①}\\ \iff&(k-4)(x-1)\\ \iff& k=4または x=1 \end{aligned}\]

途中を省略すると、「$P \implies k=4またはx=1$」となります。

他方、今のところ、「$P \impliedby k=4またはx=1$」とは言っていません。例えば、上の式①「$x^2+kx+4=x^2+4x+k$」は、「$x^2+kx+4=x^2+4x+k=5$」の可能性も含んでいます。そのため、「$k=4またはx=1\implies P$」とは言えません。

そのため、$k=4$の場合、解を$x=1$とした場合をそれぞれ検討しなければなりません。

十分条件

$k=4$

$k=4$のとき、次のようになります。 \[\begin{aligned} P\iff&x^2+4x+4=0\\ \iff &(x+2)^2=0\\ \iff &x=-2 \end{aligned}\]

したがって、$k=4$のとき、連立方程式$P$の解は、$x=-2$となります。そして、$x=-2$以外の解は、ありません。

$x=1$

連立方程式$P$が$x=1$を解とするための必要十分条件として、$k$の値を求めます。

「連立方程式$P$が$x=1$を解とする」は、「$x=1$を代入すると、$P$が成り立つ」という意味です。そのため、$P$の2つの式に$x=1$を代入して、共に等式が成立するように$k$の値を決めます。

代入して等式を変形した結果、$k=-5$となります。連立方程式$P$が$x=1$を解とすることは、$k=-5$と必要十分条件となっています。

さらに、$k=-5$のとき、連立方程式$P$に$x=1$以外の解があるか検討します。

「$P \implies k=4またはx=1$」から、「$Pかつk\neq 4 \implies x=1$」です。したがって、「$Pかつk=-5\implies x=1$」となります。

つまり、$k=-5$のとき、「$P \iff x=1$」となります。連立方程式の解は$x=1$しかありません。

\[k=4\text{のとき、解は}x=-2{。}\]\[k=-5\text{のとき、解は}x=1{。}\]