『線型代数学』(齋藤正彦/東京図書)で悩んだ所

はじめに

線型代数学の素人が、齋藤正彦先生の『線型代数学』(東京図書/第7刷)を1人で読んでいて、悩んだ所を残しておこうと思います。

言うまでもないことですが、「悩んだ」というのは、「テキストが悪い」ということではありません。

3.1.12 命題2)

余計な心配として、$\sigma$から$k$が決まらないような気がするので、$\mathrm{sgn}\sigma$が1つに定まらないような気がしました。

しかし、元々$\mathrm{sgn}\sigma=(-1)^{p(\sigma)}$としており、$p(\sigma)$が各$\sigma$に対し1つに定まります。したがって、$k$が定まらなくても、$(-1)^k$は定まります。

第4章

4.2.2

4.2.1ではユニタリ行列で証明してますが、4.2.2では正則行列で三角化しています。第2章末の問題1から、(ユニタリ行列に限らず)正則行列を用いて、三角化することができます。

また、$Q_1$の辺りでは、$B_1$を三角化しています。これは、4.2.1の$V_1$による三角化に対応しています。

4.4.1 3)

もちろん$p$は$A$の正固有値の数,$q$は負固有値の数,$r=p+q$は$A$の階数である.

ここで「もちろん」と言われ、困りました。

この引用文がp.126 4.4.3 2)に書いてあれば、「もちろん」を十分に理解することができます。

第6章

6.2.23 2)

$y_1=1$、$y_2=y_3=\cdots =y_n=0$とすると、$x_j=p_{j1}$となる。

第8章

この辺りから、負荷が強くなった気がします。気のせいでしょうか。

見落としているのかもしれませんが、次のようなことが直接には書かれていない(ような気がする)ので、私のような初学者には大変です。

  • $T$を$V$の線型変換、$V$のある基底に関する表現行列を$A$としたとき、$T^k$の表現行列が$A^k$になる。
  • $T-\alpha I$の表現行列は、$A-\alpha E$となる。

8.1.3

$(T-\alpha I)^p x=0$、$(T-\alpha I)^{p+1}=0$なる

$(T-\alpha I)^{p+1}=0$ではなく、$(T-\alpha I)^{p+1}x=0$

$T-\alpha I$と$T- \beta I$は交換可能

\[\begin{aligned} (T-\alpha I)(T-\beta I)&=T(T-\beta I)-\alpha (T-\beta I)\\ &=T^2 -\beta T -\alpha T+ \alpha\beta I\\ &=T^2 -\alpha T -\beta T + \alpha\beta I\\ &=(T-\beta I)(T-\alpha I)\\ \end{aligned}\]

8.1.4

4.2.3の命題2)と命題3)から、$X-\beta_{i} E_{m_i}$はべきれい。

p.204ノート

以上で,目指していた定理8.2.2と定理8.2.2’が完全に証明された.難しかった!

やった!

8.2.9

このとき$(A-\alpha E)x=0$の適当な解(固有ベクトル)$p_1$を選ぶと、$(A-\alpha E)p_2=p_1$となる$p_2$が存在する。

$n-r=m-1$から固有空間$V(\alpha)$は$m-1$次元である。$\dim W(\alpha)=m$であるから、ある$q \in W(\alpha)$は、$q \notin V(\alpha)$である。

$(A-\alpha E)^n q =0$から、ある整数$k$($1\leqq k\leqq n-1$)に対し、$(A-\alpha E)^k q \neq 0$かつ$(A-\alpha E)^{k+1} q =0$となる。$(A-\alpha E)^{k} q\in V(\alpha)$である。$(A-\alpha E)^{k-1} q=p_2$とすると、$(A-\alpha E)p_2 \in V(\alpha)$である。

$P=(p_1 p_2 \cdots p_n)$とすると、\[P^{-1}APe_2=P^{-1}Ap_2=P^{-1}(p_1 + \alpha p_2)=\begin{pmatrix} 1 \\ \alpha\\ 0\\ \vdots\\ 0 \end{pmatrix}\]となる。