目次
はじめに
数学Ⅲの内容を含みます。
$f(x)$は、実数のある開区間$I$上で定義され、$x$に$I$の範囲内の実数を代入すると常に実数の値が返ってきます。また、2回微分可能です。
$I$において曲線$y=f(x)$の接線と接点が1対1に対応するか、十分条件で判定します。
接線と接点が1対1に対応するための十分条件1
曲線$y=f(x)$の$x=a(\in I)$における接線は、次の式で表されます。 \[\begin{aligned} y=&f'(a)(x-a)+f(a)\\ =&f'(a)x+f(a)-af'(a) \end{aligned}\]
したがって、接線と接点が1対1に対応するためには、次のようなことで十分です。
- $f'(x)$が1対1に対応する
- $f(x)-xf'(x)$が1対1に対応する
$f(x)$が2次関数なら、$f^{\prime\prime}(x)$が定数なので、$f'(x)$が狭義単調になります。
2接点における接線が一致するための必要十分条件
実数$a,b(a\lt b)$を$a,b\in I$とします。
平均値の定理から、ある$c(a\lt c \lt b)$が存在し、\[f'(c)(b-a)=f(b)-f(a)\]となります。
$x=a,b$における曲線$y=f(x)$の接線が一致するための必要十分条件は、$f'(c)=f'(a)=f'(b)$です。
証明
$x=a,b$における接線が一致するというのは、任意の実数$x$に対し、次の2式が成り立つことです。 \[\begin{aligned} &f'(a)(x-a)+f(a)=f'(b)(x-b)+f(b)\\ \iff&f'(a)x+f(a)-af'(a)=f'(b)x+f(b)-bf'(b)\\ \end{aligned}\]
つまり、次の2つの等式が同時に成り立つということです。 \[\begin{cases} f'(a)=f'(b)\\ f(a)-af'(a)=f(b)-bf'(b) \end{cases}\]
1つ目の式を用いて、2つ目の式の$f'(b)$を$f'(a)$にします。 \[\begin{aligned} &f(a)-af'(a)=f(b)-bf'(a)\\ \iff&f(b)-f(a)=f'(a)(b-a)\\ \iff&f'(c)(b-a)=f'(a)(b-a)\\ \iff&f'(c)=f'(a) \end{aligned}\]
結局、$x=a,b$における接線が一致するための必要十分条件は、 \[f'(c)=f'(a)=f'(b)となります。\]
補足
曲線と2点で接する接線は、曲線上の2点を通る直線です。その接線の傾きは、平均値の定理の「平均値」に等しくなります。
接線と接点が1対1に対応するための十分条件2
ある直線が曲線$y=f(x)$と$I$において2点で接するためには、ある$a,b\in I(a\lt b)$に対し、$f'(a)=f'(c)=f'(b)$となることが必要です。
ロルの定理より、そのためには、その$a,b$に対し、方程式$f^{\prime\prime}(x)=0$が$a\lt x \lt c$と$c\lt x \lt b$で実数解を持つことが必要です。
そのためには、方程式$f^{\prime\prime}(x)=0$が$a\lt x \lt b$で異なる実数解を2つ以上持つことが必要です。
そのためには、方程式$f^{\prime\prime}(x)=0$が$I$で異なる実数解を2つ以上持つことが必要です。
つまり、$I$で方程式$f^{\prime\prime}(x)=0$の(異なる)実数解の個数が1以下ならば、接線と接点が1対1に対応します。
3次関数
$f(x)$を3次関数とします。
1次方程式$f^{\prime\prime}(x)=0$は、実数解を1つしか持ちません。したがって、曲線$y=f(x)$の接線と接点は、1対1に対応します。
名古屋大学(理系)数学2024年第1問
\[x\gt 0\] \[f(x)=\sqrt{x}+\dfrac{2}{\sqrt{x}}\] \[f'(x)=\dfrac{x-2}{2x\sqrt{x}}\] \[f^{\prime\prime}(x)=\dfrac{\sqrt{x}(6-x)}{4x^3}\]
$x \gt0$で$f^{\prime\prime}(x)=0$の解は、$x=6$しかありません。したがって、曲線$y=f(x)$の接線と接点は、1対1に対応します。